最終話

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「幸せだな……美咲」 「え?」  目を覚ましたのかと思いジッと見つめていると、また寝息をたてはじめた。  どうやら寝言を言っていたみたいだ。 (どんな夢見てるんだろう)  この穏やかでのんびりとした時間に私はとても安らぎを感じた。  その後私は無事退院をしお腹の赤ちゃんも順調に育っていった。  安定期に入ったのにも関わらず司さんはいつでも私の傍にいてくれた。  仕事が忙しい時には決まって私を退屈させないよう渚さんやユウヤ君たちを家に呼んでくれた。  大抵がユウヤ君のおすすめテレビゲームをみんなでくたくたになるまで遊んでいる。  沢山のことを気遣ってくれる司さんや皆に私は心から感謝した。  あれ以来三嶋麗香の存在もなくなり不安も私の心からすっかり消えていった。  そして新しい年を迎え、柔らかな日差しが若葉に降り注ぐ六月の初夏。  新しい生命が産声をあげた。 「おいおい、司大丈夫か?」  近藤さんは心配そうに司さんを眺めていた。  司さんは涙腺が壊れてしまったんじゃないかと思うほど終止私の傍で泣き続けていた。  後で駆け付けてくれた黒木さんや近藤さんが私の心配よりも司さんの心配をするほどだった。 「本当に、本当によかったよーうっうっ」 「司さん、みなさん引いてますよ、もういい加減泣き止んだらどうですか?」 「いや、今日だけは許してくれ、嬉しくて仕方がないんだ」  そんな司さんに黒木さんと近藤さんは呆れ顔だ。 「しかし美咲ちゃんよく頑張ったね、お疲れ様」  近藤さんはそう言うといつものように頭を優しく撫でた。 「イサミ、気安く美咲に触るなよ」  さっきまで泣いていた司さんは突然怖い顔をし近藤さんにくってかかった。 「黙れ泣き虫!いやお前は今日から子泣きジジイだ」  近藤さんはクールに言い放ったが、そのネーミングはどうかと思う。 「なんだとテメー!誰が子泣きジジイだ!」  なんだか雲行きが怪しくなってきました。  そんななか二人の言い争いをよそに黒木さんが真剣な顔して口を開いた。
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