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黒木さんの苦労は報われずコマチは延々と泣き続け、オヤジ熊の二人はさすがに疲労困憊しその場に倒れこんだ。
「美咲……ひぃひぃ……あとは頼んだぞ」
そう言いながら司さんが私にコマチを渡そうとすると、突然私の目の前にガッチリした腕が現れ横からコマチを奪い取った。
「この二人は心が腐ってるから嫌いなんだよなーコマチ、さあ、イサミと遊ぼう」
「近藤さん!」
「誰が心が腐ってるだ!お前よりはましだ!」
息を切らす黒木さんの訴えも空しく近藤さんは泣きじゃくるコマチを軽々と高い高いする。
するとあら不思議。
「きゃはきゃはきゃは!」
コマチは近藤さんの腕の中で笑い声を上げ喜びはじめた。
そして、それを恨めしそうに見るクタクタのクマ二人。
「お前らどうだ、悔しいだろ!」
「ば、馬鹿言うな、父親の俺が本気を出せばコマチは笑い転げて腹筋崩壊してしまうぞ!」
(司さん、またそんな強気発言して……コマチのことになると負けず嫌いなところがでちゃうのよね……はぁ)
「黙れ近藤!俺だってちゃんとクマ太郎練習すればお前なんて目じゃねーんだよ!」
黒木さんもヨロヨロになりながらも立ち上がり近藤さんに宣戦布告を突き付けた。
(もうなんなのこの人たち)
周りの皆も三人を無視し、それぞれの時間を有意義に楽しみはじめた。
それでもオヤジ達の口論は止まることを知らない。
「大体近藤、お前は昔からたらしこむのが得意だったんだよ!コマチもついついそれに引っかかってしまった、可愛そうなコマチ」
「なんだと!?誰がたらしだよ!」
「お前だよイサミお前だ!」
いつの間にかコマチも争いごとをよそに近藤さんの腕の中でスヤスヤと寝息を立て寝てしまった。
「言わせてもらうけどな近藤!お前そんなに俺たちに偉そうにできるのかよ!」
「何がだ!」
「司!お前もこの前テレビで見ただろ、三嶋の奴だ!」
(!!)
黒木さんのとんでもない発言でこの場はシーンと静まり返ってしまった。
見事にこのお方は踏んではいけない地雷をいとも簡単に踏んでしまったのだ。
話を振られた司さんはここぞとばかりに強気な姿勢を見せる。
「あーどうやらイサミは俺たちに隠し事があるみたいだなーホント薄情な奴だ」
「は?別に隠し事なんてしてないし」
近藤さんははっきりと言い返したが目がかなり泳いでいる。
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