イサミンの恋人

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『俺にとってかけがえのない大切な親友だ』 (ホントに気持ち悪いヤツ)  去り際に司から言われた言葉を思い出しながら俺は病院を出た。 (二人が幸せなら俺はそれでいい)  俺はそのまま目の前に停まっているタクシーに乗り込み自宅に向かうように伝えた。  正直あの時から焦って震えが止まらなかった俺だが今は美咲ちゃんの無事な姿が見れて心の底からホッとしている。  事の発端は恐らくあの女の存在だろうとおおよその見当はつく。  あの女は昔からそうだ。司狙いで近寄る女子は容赦なく消していき誰一人司に触れさせないようにしていた。美咲ちゃんもアイツの餌食になってしまった。  本当にアイツには悪女という言葉がぴったりだ。考えるだけで腹立たしくなる。  しかも俺はアイツとは反りが合わなく。会話もろくに交わしたことがない。 (今度あの女に会ったら絶対に美咲ちゃんの仇をとってやろう!)  そんな事を考えながら過ぎ行く景色を眺めていると司の師である三嶋シェフの入院している病院が見えてきた。 (確か黒木が言ってたな……ここの南棟七階)  少し前に黒木があの女の事や三嶋シェフについて電話でペラペラ喋っていた事を思い出す。  俺も昔何度か世話になったこともあり、一度は顔を出すべきではとそう思い、咄嗟に運転手へ病院前に停車するよう指示した。  タクシーを降りた後はとりあえず七階を目指す。 (何号室か聞いておけば良かった……まあいい適当に──)  するとエレベーターへ向かう途中にある待合室から小さく項垂れる女性の姿が見えた。  照明が暗くてよく見えないが近付くにつれ正体が明らかになる。 (もしかして……三嶋……麗香?)  後ろ姿だけでも俺にはそれがあの女だということがわかった。  しかも、女は泣いている。  俺は声を掛けようかそれとも構わず病室に向かうべきか迷った挙げ句──足をその場に止めてしまった。 「おい」  俺の呼び掛けに女の体がピクリと反応したが、コチラを振り向こうとしない。 「ちょうどいい、三嶋シェフの病室を教えろ」  俺がそう訊くと三嶋は突然笑い声を上げはじめた。 「あはは!!誰かと思えばその声、不細工のタラシ君じゃない」 (っだとコイツ!!) 「せっかくだけど残念ね……パパは今息を引き取ったわ」 「は?」
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