イサミンの恋人

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「聞こえなかったの!?パパは死んだのよ!!」  そう強く言うと三嶋は俺に背を向けたまま泣き崩れた。  俺はてっきり司から派手にフラれ、それが原因で泣いているのかと思っていた。  ギャフンと言わせるつもりが思わぬ事態に調子が狂ってしまった。  この女も人の子だ、こんなに性格がねじれてるヤツでも両親との別れはやっぱり涙が出るんだな、とそう密かに思った。 「司が去った後に……容態が急変して……」  三嶋は項垂れたままその場から動こうとはしなかった。  そして、俺は三嶋の隣に座りこの事を司に知らせるべきか悩んでいたが、今は言うべきではないと判断しポケットの中で握りしめていた携帯をスッと手放した。  そして隣で泣き続ける三嶋を見るとコイツは案外綺麗なんだと感じた。性格さえよければ十分通用するくらいのレベルだ。 (って何考えてんだ俺は……)  そんな感じで一時間が経過しようやく落ち着きを取り戻した三嶋は父親と共に帰宅する事となり俺もその場を去ることにした。  その後三嶋シェフの葬式がしめやかに行われたが、さすがに有名シェフだけあり沢山の著名人がこの葬式に訪れている。  俺は来るはずもない司の分も含め三嶋シェフの祭壇に合掌し深く頭を下げた。  そして、その場を去ろうとした時に部屋の片隅で一人静かに佇む三嶋の姿が目に留まった。  喪主を務める三嶋はパイプ椅子に座り父の遺影をじっと見つめながら涙を流している。 (アイツ……)  2日ぶりに見る三嶋はまるで別人のように老け込んでいて、あまりの変わりように俺は驚いた。いや多分、参列している皆がそう思っているはずだ。 「おい、三嶋」  俺は三嶋の元へ足を進め声をかけるとヤツはゆっくりと力無しにコチラへ顔を向けた。 「ウザイわね、用が済んだのならサッさと帰りなさいよ。こっちはね不細工の相手なんかする気もないの」  相変わらずの言いぐさだがやはり迫力がない。 「お前な、人のこと不細工とか言ってるけどな、今の自分の顔見たか?」 「そんな暇ないわ」 「言っておくが、少なくとも今のお前は俺より不細工だ」 「な、」  それはさすがに自分でもわかっているのか、これ以上反抗する様子がない。 「今後のお前のためにもう一つ言葉を付け加えてやる」  俺の言葉に三嶋麗香は無視しそっぽを向く。 「飯は食え」 「は?」
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