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「せっかくの美人が台無しだ」
「へ?」
三嶋はポカンと口を開け赤面しながら俺を見つめている。
「……え?」
(俺おかしなこといったか?)
特に恥ずかしくなるような事は言ってないつもりだが、相手が顔を真っ赤にしてるせいで俺まで顔が熱くなりはじめた。
「あんたやっぱりそういう男なのね!平気でそんなこと言って女をその気にさせてきたんでしょ!」
すると三嶋は鬼の形相のように顔を変えよりいっそう赤面させていた。
「あのなー俺はお前が思っているような軽い男じゃねっつうーの!俺がタラシ男っていう噂を学校中に撒き散らしたのは黒木だ、アイツの嫌がらせなんだよ。簡単に鵜呑みすんじゃねーよ」
「そうなの?」
俺はコクりと頷いた。
「じゃあ俺帰るからな。ちゃんと飯食えよブス」
「ブスって!あんた!!」
軽く手を上げ俺は三嶋の前から姿を消した。
それから一週間が過ぎた午後。俺は偶然にも休憩室前でロッカーの片付けをしにやってきた三嶋と出会った。
葬式の時よりかはマシだがやっぱり以前までの三嶋とはどこか違って見えた。
俺はもう余計な事は言うまいと、そう思い休憩室へ入ろうとした。けれどその時、すれ違いざまに三嶋はポツリと小さく呟いた。
「あの日はありがとう」
俺はハッとし足を止め無意識に階段を降りようとする三嶋を呼び止めた。
「お前、パリにはいつ戻るんだ?」
すると三嶋は少し間をあけて口を開いた。
「私はもうパリには帰らない。私……パティシエ辞めるわ」
俺はその言葉を聞き呆れてため息が出てしまった。
アイツの生き甲斐が全て無くなりやる気を無くしてしまう気持ちも分からないこともないが──。
「今日の夜、時間を空けておけ。仕事終わったら電話する」
「!?」
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