イサミンの恋人

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「私の番号知らないくせに……じゃあ、さようなら」  三嶋はそう言うと再び足を進めはじめる。  確かに奴の言う通り俺は相手の番号を知らない。今まで接点がなかったし必要ないとも思っていたが、この機会に聞いておくのもいいと思い俺はとっくに下へ降りている三嶋を呼び止めた。  相手にしなけりゃいいもののなぜ俺はヤツを放っておけないのか。 「おい待て」  三嶋はふと足を止めた。 「○×町にある“ベリィ”っていうバーに来い。10時集合、時間厳守だからな!」 「はぁ?何言ってんの?い、行くわけないでしょ」 「いや、お前は来るはずだ」  確信はないが、今のこいつならこう言えば来るだろうと思った。 「別に無理ならいいよ、お前が来なくても俺は一人で飲んでるから」  そうすると三嶋は顔を赤くして「絶対行かない」と叫びながら裏口を出た。  しかし、どうだ、時間になると俺の予想通り三嶋はやってきた。 「やっぱり来たな!!クククッ」  俺が笑いながら出迎えると三嶋はツンと顔を横に向け席に座った。 「うるさいわね!仕方なく来てやったのよ!!ありがたく思いなさいよね」 「そりゃどうも」  相変わらずの高飛車な態度に俺は苦笑してしまった。  そして三嶋はキッとにらみ口を開いた。 「どうして私に構うのよ!?」 「別に、俺が行くとこ行くとこにお前がいるんだから仕方ないだろ」 「学から聞いたわよ!あんたあのミサキって女が好きだったんでしょ?」  三嶋は勝ち誇ったような顔で俺を見る。 (黒木!!あのヤロー!!) 「あの女がダメだから私ってわけ?それとも何?淋しい者同志語り合いましょってこんたん?」 「は?馬鹿じゃねーの?そんなわけねーよ!お前と一緒にするな!!」  俺は思わず声に力が入ってしまった。  そんな俺の態度に三嶋は首を竦める。
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