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手にグッと力が入った。
『では簡単クッキングの時間です!!なんと今日は、あの有名なパティスリーHAKUのオーナーシェフを勤めます、白川司シェフに来ていただきました!!どーぞ!!』
拍手の中から現れた司さんは意外と──。
「どーも!」
余裕たっぷりの表情だった。
自慢の白い歯を輝かせ、まんべんなく皆に司スマイルを投げかけている。
(あれあれ???)
私は首を傾げながら司さんに見とれていた。
(意外と平気なんだ、もっと緊張してるかと思ってたけど……なんかなれた感じだなぁ)
私の予想では、もっと謙虚に登場するもんだと思っていたぶん、この司さんにはずいぶん拍子抜けしてしまった。
しかも出演者方達は司さんに釘付けだ。
(仕方がないよね、司さんカッコいいもん)
そう思い無意識にため息が出た。
そうしている間にも番組はどんどん進行している。
『ホントにイケメンですね。こんなシェフがいたら私毎日でもお店に通っちゃいますよ』
そうキャピキャピした感じで喋っているのは超売れっ子タレント月森アイ。
彼女は私と同じ年だけど、若いアイドルに負けない人気っぷりだ。
するとそんな月森アイに司さんは再びホッコリ笑顔をつくる。
『大歓迎です。是非ともいらしてください!』
(え?あれ?つ、司さんってそんなキャラだったかしら!?サービスよすぎませんか!?)
私は思わず目の前にある空になったティッシュの箱を勢い良く潰した。
(あれだけテレビ出るの嫌がってたのに!なににやけちゃって!くぅ~)
「美咲さん落ち着いて下さい、お気持ちは十分わかります」
「あ、すみません……私ったら……」
私の苛立ちを感じとったのか一緒に見ている黒木さんの奥さんが、優しくなだめてくれた。
おかげさまで、その後は最後まで冷静にテレビを見れたが、黒木さんの奥さんをお見送りし、司さんが帰宅するまで、イライラは募るばかりだった。
そして、時計は10時を回り、ようやく我が家に主人が帰ってきた。
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