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「わかった、いいよ」
司さんは微笑み簡単に承諾してくれた。
テッキリ断られえるものと思っていた分、この返事には意表を突かれた。
「嘘じゃないですよね?本当ですよね?旅行ですよ?日帰りじゃないんですよ?」
「あはは、嘘じゃないよ。二人で旅行に行こう」
この言葉に私は思わずその場で飛び跳ねてしまった。
「美咲!コマチが起きるだろ!」
「あ、すみません、嬉しくてつい……」
顔では反省しているものの内心は今でも胸を躍らせていた。
「司さん予定の日時はなんと17日ですよ!16日から18日までの二泊三日を予定してます!」
私はこの日が結婚記念日だと気付く司さんの顔が見たかった。
しかし司さんからの反応は何一つ返ってこなかった。
「分かったその三日間必ず空けておくよ」
そう一言だけ残し司さんはコマチの部屋に向かった。
(あれ?司さん、もしかして……結婚記念日忘れてないよね?……まさかね)
けれども私はそんな不安などすぐに忘れ、翌日から急いで私たちが泊まれる旅館をくまなく探していた。
しかし、今回の旅行が急だということもあって、ほとんどの旅館は満室状態で私はたて続けに断られてしまった。
(どうしよう……)
そんな、へこみ肩を落とす私を隣のコマチが笑って元気にしてくれた。
「ありがとうコマチ、ママ頑張るね!」
「まんま~まんま~」
もう候補も残り一件となってしまった。
電話番号を押し、呼び出し音が鳴る、するとそこから落ち着いた女性の声が聞こえた。
「お電話ありがとうございます、こちら白金(しろがね)荘でございます」
私はこの旅館で断られたらもう、旅行を断念しようと、そう思っていた。
そして、ゆっくりと話しはじめる。
「あの、16日から二泊三日で大人二名での予約をとりたいんですが、空きはありますか?」
最後となったこの旅館は雑誌でも高評価をもらっているほどの有名な旅館で、私はこんな旅館に限って空き室は絶対にないだろうとそう思い、はなから期待をしていなかった。
半ば諦めモードだった。
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