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すると私は次に発した女性の言葉に耳を疑った。
「はい、大丈夫ですよ」
私は聞き間違えかと思いもう一度聞き直した。
「大人二名の二泊三日ですよ」
「はい、ちょうど先程キャンセルが出まして、一部屋空きがございます」
「ほ、本当ですか!?」
私は嬉しくて歓喜の声をあげてしまった、それに続きコマチも一緒になって喜んでくれた。
それから私は続けて旅館側に名前や住所など必要な事を伝え無事予約が完了した。
「では、……あ!出来れば17日はちょっと豪華な料理をお願いします」
「承知いたしました、ではお待ち致しております」
「宜しくお願いします」
そう告げ私は電話を切るとすぐに黒木さんの奥さんにこのことを知らせた。
「本当ですか?それは良かったですね!出発はしあさってでしたよね?では明後日15日にコマチちゃんを迎えに行かせていただきます」
「本当にありがとうございました。では、よろしくお願いします」
私は電話の向こうにいる黒木さんの奥さんに何度も頭を下げていた。
そして電話を切るとすぐに司さんの携帯に連絡をいれた。
今頃司さんは出来たばかりの二号店で最終チェックをしているはずだ。
「あっ、司さんですか?旅館とれましたよ!人気の旅館なんです!料理もお部屋も素敵で司さんもきっと気に入ると思います」
私は興奮がおさまらず高いトーンでひたすら話し続けていた。すると司さんは私とは逆の声音で「そう」っと一言だけ呟いた。
「あ、あの……」
「美咲、悪いけど今ちょっと話し合いの途中だから……後でね」
司さんはそういうと一方的に電話を切った。
「あ、つか……」
先程までの高ぶった気持ちが一瞬にして消えて行ってしまった。
そして、一人浮かれていた自分に反省した。
(私……何やってるんだろう、司さんは真面目に仕事してるのに、帰って話せばいいことを、何で、わざわざ電話しちゃったんだろな……ダメだな……私)
そして反省も程々にし少し気持ちを落ち着かせた私は、旅行準備のために必要なものを今のうちに買い揃えておこうとコマチを連れショッピングモールに出掛けた。
けれども結局司さんからの折り返しの電話はなく、私は仕事から帰ってくるのをじっと待つことにした。
そして、八時、ようやく司さんは帰ってきた。
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