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ショックはまだ癒えないけれどそれを顔には出したくなかった。
「美咲、本当に悪かっ──」
「あ!あのですね、あの後黒木さんの奥さんに電話をかけたんですが、いくらかけても留守電で、だから私明日の朝、直接黒木さんの家に行ってコマチ迎えに行ってきます」
司さんの言葉を聞いてしまえば今にも泣いてしまいそうな私は、そうならないために自分から話を振り続けた。
「そう」
「司さんお風呂湧いてますのでどうぞ」
そう伝え私はそそくさとキッチンへ向かった。
だけど、まだ旅館をキャンセルしていない事は言えずにいた。
もしかしたら予定が変わって──なんて未だに私はそんな往生際の悪いことを考えていた。
そして、お風呂から上がった司さんと私は静かに晩御飯を共にした。
お互い何も喋ることがなく沈黙は続くばかりだ。
コマチがいないと今の私たちはこの場が明るくなるような会話も出来ないことにはじめて気付いた。
ご飯がうまく喉を通らない。
するとその時だった、司さんの鞄から携帯の着信音が聞こえてきた。
それに合わせ司さんは席を立ち携帯を手にするとリビングを出て行ってしまった。
しんと静まりかえるリビングで一人ひたすらに味気のないご飯を口にしていると、廊下に出ている司さんの声が聞こえてくる。
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