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「こんばんは、……あ、大丈夫です、……はい、17日は必ずそちらに向かいます」
(…………)
「いえいえ、気にしないで下さい、ウンと最高のケーキを月森さんへお届けいたします。ご心配なく」
「!?」
盗み聞きするつもりはないが、静かなせいで嫌でも話し声が耳に入ってしまう。
「えぇ……ハハハもっとだなんて月森さんも欲張りですね……あはは」
(……つき……もり……アイ)
「うぅ……くっ」
その名前を聞いた瞬間に我慢していた何かがプツリと切れ、次から次へとたまっていた涙がポトリポトリと、テーブルに流れ落ちて行く。
(ダメだ……もう……)
私は立ち上がり食べ掛けの皿をキッチンに置くと司さんに気づかれないようにリビングを抜け出した。
足早に別室に入り鍵を締める。
(司さんの中にはもう私がいない……)
布団にくるまり声を出さず泣き続けた。
悲しくて、悲しく仕方がない。
少しした後に司さんがこの部屋をノックしていたが私は鍵を開けることはなかった。
楽しそうに話す司さんの声を聞くのがこんなに辛く感じたのは今日がはじめてかもしれない。
そして、私は決意した。
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