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(明日、コマチと一緒に──)
そんな色々な計画を立てているといつの間にか窓の外が明るくなっていることに気付く。
「朝か……」
また眠れない夜が明けてしまった。
携帯の時計を確認すると四時を表示している。
私は時折、携帯に残された司さんやコマチの写真をずっと眺めて懐かしんでいた。
(司さん……黙って出て行くことを許してください)
そう、心の中で呟いてる、その時、かすかに遠くから司さんの足音が聞こえてきた。
(司さんこの時間から仕事に行くのかな?少し早いような……)
すると司さんの足音は私のいる部屋の前で止まり、それと同時に私の脈がスピードを増す。
(……)
部屋の前にある廊下は、玄関までの通り道でもあり、私はてっきり司さんがそのまま素通りして玄関に向かうのかと思っていた。
予期せぬ事態に緊張で、じっとりと手に嫌な汗をかいてしまった。
(どうしたんだろう……)
「……美咲、仕事行ってくるよ」
「……」
(もしかして、それを伝えるために私の所に寄ってくれたの?)
ほんの小さな事でも私はうれしくて、思わず布団から飛び出し扉へと駆け寄った。
「っつか……」
けれど──。
「今日は帰らないから」
「!?」
(……帰ら……ない)
日々時間に追われている司さんだけど、結婚してからいままでどんなに忙しくても家に帰らないということは一度もなかった。
それほどまで月森アイの依頼が大事なのか。
それとも私のいる家には居たくないのか。
私はドアノブを持ったままその場に立ちすくんでいた。
開かれない扉の向こうは、すでに司さんの存在はなく玄関のドアが閉まる音だけが、この家に響いた。
もう、自分に自信が持てなくなってしまい、司さんが出た後すぐに私は荷物をまとめ静かにこの家を出た。
(司さんごめんなさい)
大きなキャリーバッグを引きながら私はコマチのいる黒木さんの家へと向かった。
朝早くに申し訳ないと思ったがこれ以上二人に迷惑をかけるわけにはいかなかった。
私はタクシーに乗り込みすぐに黒木さんの奥さんに連絡をいれたが、昨日と同様すぐに留守電に繋がってしまう。
(どうしたんだろう)
そして連絡がつかないまま一時間が経過し、タクシーは黒木さんの自宅付近に到着した。
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