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そこは、純和風の二間続きの部屋が広がり、中からでも緑豊かな木々たちが一望できるように造られていた。
時間を忘れてしまいそうになるほどの空間だった。
「気に入られましたか?」
「はい!」
本当はこの感動を司さんと味わいたかったが、これ以上は考えることもやめにした。
「お食事は6時にお持ちいたしますので、それまでごゆっくりとお過ごしください」
(これからだとまだ二時間ほど時間があるな……)
「あの、どこかおすすめの場所を教えていただけませんか?」
「それでしたら――」
と、いうことで、私は仲居さんおすすめの観光スポットを巡ることにした。
陶芸工房やワイン工場、そして有名な湖も足を運び私は近くのお茶屋で一休みすることにした。
~♪
「!!」
その時、突然鞄に入れていた携帯が鳴り始め私は急いで鞄から携帯を取り出した。
するとディスプレイには“黒木さん”と表示されている。
心臓がドキッと激しく動いた。
(どうしよう、なんで、……)
私は慌てて店を飛び出し人気のない場所で電話に出た。
「もしもし」
すると、電話に出たのは黒木さんじゃなく奥さんの方だった。「美咲さんごめんなさい!私の携帯故障していたんです!もしかして、私に連絡していたんじゃないかと思って学さんの携帯を借りて電話したんです!」
「故障?」
(そうか……だから留守電に繋がっていたんだ)
黒木さんの奥さんはすごく申し訳なさそうに何度も何度も私に謝ってきた。
「大丈夫ですよ、心配にはなってましたが理由が分かって安心しました」
そう告げると、突然耳が壊れてしまうほどの大きな声が携帯から聞こえてきた。
「安心するのはまだ早いだろが!このバカ女!!」
(ヒィイイイ!!この声黒木さん!!)
まさかの不意打ちを食らい私は足を竦ませてしまった。
「お前今どこにいるんだ?一人で」
「あ、その、えっとえっと……」
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