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そう、思い携帯をもう一度、手に取ると、ディスプレイが真っ暗になっていた。
(うそ!充電が切れてる!)
ますます、自分の間抜けさを呪い、再び旅館へ向け歩きはじめた。
(はあ……黒木さんの言うとおり頭冷やして一日早いけど明日朝一で家に帰ろう)
そして部屋に戻り豪華な食事を一人切なく食べると、私は部屋に備え付けられてある貸切露天風呂に入ることにした。
満点の夜空を見ながら入るお風呂はとても素敵で、先程まで沈んでいた気持ちがいくらか回復していく。
「司さんにも見せたいな、この景色」
けれど、司さんを思うと胸が苦しくなる。
(司さんは今も私やコマチのために頑張っているんだそれに比べ私は……)
やるせない気持ちが胸を締め付け、私はすぐにお風呂を上がった。
すると、部屋にはすでに布団が敷かれ、寝る用意がされてあった。
けれど、何故か布団が二人分。
(おかしいな、一人分だって分かってるはずなんだけど、仲居さんうっかり間違えたんだろな)
そんなことを考えながら私はパタリと布団に倒れこみテレビを見ながらいつの間にか眠ってしまっていた。
“ザアアアアアアア……”
それから夜も明けていない時間帯に私は目を覚ましてしまった。
つけたままのテレビは独特な音を出し砂嵐を映し出していた。
(何だか、気持ち悪い)
なぜか、急に寒気がした私は恐る恐る布団を脱ぎ取りお手洗いに向かった。
(そう言えばよくテレビで言ってるよね……旅館で幽霊に遭遇したとか)
そんなことを考えるとますます恐怖で体が硬直してしまう。
(どうしよう本当に怖くなってきた)
私は逃げるようにお手洗いから飛び出し布団の中へ逃げ込んだ。
この部屋の照明はぼんやりと薄暗い感じだから、シチュエーションはバッチリだ。
するとどこからともなく入口の方から誰かの足音が聞こえてくる。
(うそ!)
私は息を静め耳を澄ました。
“タッタッタッタタタ……”
今度は鮮明に聞こえ、しかも足音は私の部屋を目がけて走って来てる。
(どうしよう!)
私は布団にくるまったままガタガタと震えていた。
(お願い来ないで!)
しかし、私の願いも虚しくとうとう足音は扉の前で止まり、静寂が訪れるがその存在は消えたわけではなかった。
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