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「さぁ早く」
そう言って司さんは中からそっと手を差し出した。
(う~恥ずかしい)
こんな青空の下で裸になるのは勇気がいるけれど、貴重な二人だけの時間を無駄にはしたくなかった。
私はハラリと浴衣を脱ぎ司さんの手を取る。
「色っぽいよその姿」
「からかわないで下さい!」
そして、ゆっくりと体を湯船に浸からせた。
「司さん……月森アイのケーキはどうしたんですか?」
何よりもそれが気になって仕方が無い。
「あ、今頃、渚が運んでくれてるよ、運ぶのくらい俺じゃなくてもいいだろうし」
司さんは温泉に浸かっている私の髪を自分の指に絡めながら笑っていた。
「ケーキ完成させて直で、この旅館に来たんですか?」
「そう、今回ばかりは、さすがにハードだったよ、深夜2時に完成させて高速飛ばして2時間でここに到着したんだ」
「2時間!タクシーでも4時間かかったのに」
どれだけスピードを出してたのかは怖くて聞けない。
「ションボリさんをいつまでも放っておけないからね」
「ションボリさん……。あ、今回は勝手なことをしてすみませんでした。大事な時期に一人で浮かれて、そして挙げ句には家飛び出しちゃって」
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