素晴らしき日々

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それからは、田中さんが上手くお誕生日会を進めていった。 紙芝居や、 みんなでうたを歌ったり、 ゲームを楽しんだり。 そして、 最後は司さん特製のバースデーケーキをみんなで美味しく食べた。 「司さんとっても美味しいです!」 「フフ、ありがとう」 とても素敵で充実した1日だった。 私には、こんな沢山の人達に誕生日を祝ってもらうという経験が一度もなく、 正直みんなが羨ましく感じた。 自分の本当の誕生日さえも、いまだに知らない。 空が茜色に染まりだす。 「今日は本当にありがとう。 美咲さんまた来てね」 「はい是非」 「もう来なくていいよ~っだ」 田中さんの後ろから愛子ちゃんの声が聞こえる。 「愛子ちゃん、また遊びに来るからね、バイバイ」 車越しに手をふった。 司さんの車は発車し、どんどん田中さんと愛子ちゃんの姿が小さくなる。 愛子ちゃんは私達が見えなくなるまで、アッカンベーをしていた。 (また、ここに来たい) 帰りの車内では、子供とはしゃいだせいか、私は睡魔と戦っていた。 「美咲さんは、保育士にむいてるかもしれませんね」 心の中では返事をしているのに、口ではまともに返事が出来ない。 「……本当……で……すか?」 考えてみると、私は自分の将来の夢なんてモノを今まで一度も考えた事はなかった。 ただひたすら健治のために生きようとそれだけしか……。 「お疲れのようですね。 どうぞゆっくりして下さい」 「……あっ、すみません……私うとうとしちゃって……」 何かを喋ってないと本当に眠りそうだった。 「司さん、私……司さんのケーキ屋で働きたいです」 私の言葉に珍しく驚いている様子だった。 「……駄目でしょうか……私がんばりますから……」 司さんは何かを言っているはずなのに眠気で司さんの声が耳に入らない。 それにも関わらず私は一方的に話していた。 「私には……無理ですか?……ーキ屋さ……司さんと……いっしょに……はたら……」 「……困ったなぁ……私は君に……しまうかもしれませんね」 (司さん、今なんて──) その後は深い眠りに落ち、何も聞こえなくなった。 (……もう一度……何て言ったか聞きたい)
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