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「あ~っ竜二さん またオレのこと子供あつかいしましたね」
松崎さんの突然の言葉に、ユウヤくんは膨れっ面をしている。
「ハハハっ違うよ、お前は美咲ちゃんに つまみ食いの仕事しか教えないだろうなっと思っただけだよ」
松崎さんは、私にパチリとウインクを投げ掛けた。
「なっ!そんなことしないっス」
ユウヤ君はますます顔をしかめさせた。
そんなやり取りに思わず吹き出してしまった。
(みんなとてもいい人そう……だけど……)
先に、いなくなった人達が少し気がかりだった。
するとゆっくりと司さんが歩みよってきた。
「美咲さん、初めは慣れない事ばかりですが、無理だけはしないで下さいね」
「はい、私頑張ります!」
「期待してますよ。
分からない事があれば気軽に私に聞いて下さいね」
そう言って司さんはニコリと笑った。
「では皆さん今日も1日よろしくお願いします!
パティスリーHAKU開店します!」
司さんは皆に聞こえるよう大きな声で掛け声をあげた。
司さんのイキイキした顔に、私もつられ顔に力が入った。
(よーし!やるぞ!)
今までにないヤル気が底から、どんどんわきあがる。
そして、
私はまず、裏方の仕事を中心に色々教えてもらうことになった。
「市原さん、ここが製造場だよ、出来上がった お菓子を僕達がきれいに包装するんだ」
そこはとても緊迫した空気が流れていた。
パティシエの人達が、真剣な顔つきで お菓子を丁寧に作りあげていく。
その中に、もちろん司さんもいた。
ついつい、目が司さんを追っている。
その姿を見るだけで 何故か胸がキュッとなる。
「ねぇ、市原さん?」
「えっ!?」
私はスグに視線をユウヤ君に戻した。
「ごめんなさい、せっかく説明してくれてたのに……」
(ダメダメ!集中しないと!)
「あはは、気にしないで
っ所で市原さんって店長と付き合ってんの?」
突拍子もない質問に心臓が飛び出しそうになる。
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