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突然現れた司さんに、私とユウヤ君は、たちまち顔面蒼白になる。
「まったく……来てみれば、2人ともマスクをしているとはいえ、作業中は私語を慎みなさい」
そう言って、司さんは厳しい表情で私達を凝視していた。
「「はい」」
私達は声を揃えて返事した。
まさか、本人が後ろにいたなんて、思っても見なかった。
私達の話しの内容は聞こえてなかったようだけど……。
どこか、いつもの優しい司さんじゃない気がした。
「ところで、ここに来たのは 先程の朝礼で一つ報告漏れがありまして……」
「「報告漏れ?」」
ユウヤ君と再び声が重なった。
「今週末より いよいよバレンタインフェアに入ります。
ですから、明日の夜までに各自それぞれ良い案を考えておいてください。
閉店後に、話し合いの場を設けますので一人づつ発表してもらいます」
ユウヤ君は、険しい顔をしながら、ぶつぶつとヒトリゴトを言っていた。
「そうだよな~。
クリスマスが一段落したと思えば、すぐバレンタインだもんな~。
こりゃ休んでるヒマないや」
そう言われてみれば、お菓子屋さんは年中イベントに追われている。
クリスマスや、
結婚式や、
誕生日など、
その度にお客さんは、お菓子やケーキなどを買いに、ここにやって来る。
思った以上に大変な仕事だ……。
司さんが家に帰れないのも無理はない。
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