10年後の始まり

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「はい、じゃあ今日はここまで」 『起立!ありがとうございましたぁ』 午後4時。最後の授業が終わり、職員室へと戻る。自分の席に座ると、 「耀妃先生、お疲れ様でした」 という声と同時に、コーヒーが出された。 「美和子先生、ありがとうございます」 矢崎美和子(やざき みわこ)は耀妃の1つ下の英語教員。茶華道部の顧問で名前の通り和服美人。英語や外国の文化に興味を持ち大学時代にアメリカに留学する一方、美和子の母親の家柄が茶道と華道の家元で美和子自身もどちらの師範の資格の持ち主という、和洋折衷の先生なのだ。 「耀妃先生、来週の水曜日の放課後空いてますか?」 「来週の水曜日?多分大丈夫だと思うけれど……」 「部活でちょっとしたお茶会やるんですけど、宜しかったら来てもらえませんか?部員も先生が来てくれたら喜びますから」 「私がお邪魔してもいいの?部活の邪魔にならない?」 「邪魔だなんて。いつも私しかいないから、たまに他の方に来て頂いた方が緊張感が出ていいんですよ」 「ならお邪魔しようかな。私、お抹茶好きだから」 「ありがとうございます。部員も気合い入ると思いますよ」 と、二人でコーヒーを飲みながら話していると…… 「失礼します。茶華道部部長の三坂瑶子(みさか ようこ)です。」 と、一人の生徒が美和子の所にやってきた。 「お疲れさま。今日はいつも通りね。それから……来週のお茶会に耀妃先生来て下さるそうよ」 すると、パァっと表情を明るくした瑶子がニコッと微笑み 「耀妃先生、本当ですかぁ!やったぁ」 と言った。 「来週、楽しみにしてるわね。」 「はい!お待ちしています。では失礼します」 そう言うと、瑶子は職員室を後にした。すると、やっぱりといった感じで美和子が苦笑しながら 「耀妃先生が来るって分かった瞬間から気合い入るんだもん。今週はちょっと厳しく指導しようかな」 と冗談混じりで言うと、今度は別の生徒が 「失礼します。桜井瑛梨華(さくらい えりか)です。」 と耀妃の所にやってきた。 「お話し中のところ申し訳ございません。耀妃先生、少し宜しいでしょうか?」 と、何やら神妙な顔。 「いいわよ。じゃあちょっと出ましょうか。じゃあ美和子先生、来週宜しくお願いします。」 そう言うと、二人で職員室を後にした。
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