10年後の始まり

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職員室を出て少し歩いた所に、“国語科準備室”がある。耀妃と瑶子は準備室の中に入った。 「瑛梨華、どうした?」 耀妃が優しく問いかけると、 「……っ……先生~」 と言い、泣きながら耀妃に抱きついてきた。耀妃は小さい子供をあやすようにポンポンと背中を叩いたり頭を撫でて落ち着かせた。 「瑛梨華、最近大変だったもんね。よく頑張ってたわ」 「……っ…ヒック……」 尚も耀妃にあやされながら泣いている桜井瑛梨華は今年度の生徒会長なのだ。 誰にでも優しくて公平に接し、仕事もそつなくこなすがちょっと天然で勉強も運動も上位で頼れるお姉さんタイプの瑛梨華は、星綾高校の憧れの的。だが、責任感の強い瑛梨華はみんなの期待を裏切らい様に頑張ってしまい、一人で溜め込んでしまう癖がある。星綾高校の中で唯一弱味を見せられるのが生徒会顧問の耀妃なのだ。 しばらくして落ち着き、 「先生、私が生徒会長で本当に良かったんですかね?私、みんなが思ってるような人じゃないのに……」 と瑛梨華が耀妃に話した。 「確かに瑛梨華じゃなくても生徒会長は務まるわよ。会長候補は瑛梨華だけではなかったわよね?それでも去年の選挙で生徒のみんなは瑛梨華を選んだ。その事実は変わらないの」 ふんわり微笑み、瑛梨華を見つめ、安心させるように 「私は瑛梨華が会長になって良かったと思ってるわ。他のみんなだってそう。だからもっと自信を持ちなさい。私は瑛梨華の味方だから」 と言うと、瑛梨華はパァっと表情を明るくして 「ありがとうございます、先生。」 とにっこり微笑んだ。 「ほら、もう行きなさい。今週中に私に提出する書類があるでしょ。それから、明日の古典の予習もしておいてね。瑛梨華に当てるから」 「はい。ありがとうございました」 来たときと打って変わった様な表情をして瑛梨華は元気に生徒会室へと向かった。
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