10年後の始まり

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恵実の家に着き中に通されたが、本当に誰もいなかった。 「ちらかっててごめんね。ちょっと準備するから、そこに座ってて?」 恵実がエプロンを身につけリビングに入ってきた。普段ならあまり見ることの無い恵実のエプロン姿に、智乃は“母親”を感じた。 「先生、私も手伝っていいですか?」 「いいわよ、大丈夫。智乃はそこに座って宿題でもやってなさい。」 「でも……」 「いいから。私が呼びたくて智乃を呼んだの。それに私の授業で宿題出したわよね?後で見てあげるから、やっておいてね」 そう言って準備を始めてしまった恵実の後ろ姿を見ながら、智乃も鞄から恵実に授業を受けている現代文の教科書とノートを取り出した。次の授業でやる部分の要約と意味調べ。これだけだから30分もあれば終わるだろう。上手くいけば恵実が準備し終わるまでに終わるかもしれない、そう思いノートにペンを走らせた。
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