ハジマリ

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帰りに、秀がこの近くに凄く美味しいパスタ屋さんがあるから!と連れて行ってくれる。 コンソメ味のスープパスタが一番美味しいというそのお店は、裏に山があり、絵本にでてきそうな、木の建物で、可愛い手作りの雑貨やドライフラワーが飾られているお店だった。イタリアで腕を磨いたという女性オーナーさんが、そのパスタを作るのだ。 少しお客さんがひいた後だったようで、秀は気さくにお店の人に話しかける。秀とお店の人と世間話をしながら、初めてたべる味のパスタを食べる。 「あ、そうそう。お姉さん、オーソドックスってどういう意味で使いますか?」秀がニヤニヤしながら、お店の人に尋ねる。 「オーソドックス?えー何だか責任深い質問ですか?ちょっと待って下さいね!」お姉さんは、笑いながら、中にいたオーナーさんに質問を振る。 「定番とかっていう意味ですよね~?」カウンターごしに、お店の二人が答える。 「やっぱり!そうですよね!ほら!」秀は、興奮しながら私に得意気な顔を見せる。 そうだったのか。少し悔しながらも、笑う。 「この子がね、ワイルドって意味だと言うんですよ!違うよってさっきから言い合ってたんです!」秀のテンションが上がる。 初めてみる無邪気な秀の顔。子供達と遊んでいるときは、無邪気というより、無邪気になることに集中していて、小さなことにまで、気を回してくれていた。だから、初めてみる無邪気な顔だった。 お店を出て帰り道に、話の流れえから、秀に聞いてみたこと。 「離婚の理由って何だったの?」秀も子供は居ないが結婚の経験は、ある。10代の頃から10年程付き合っていた人と結婚後1年で離婚に至ったと前に聞いていた。 「うーん。今は気分じゃないや。今日はこの空気でいたいから、また今度な」といはぐらかす秀。 この時、自分のことや過去のことを話さない人だと言うことに少しだけ気がついた瞬間だった。 予定より、少し早く私の家に着いた。 「少しだけ時間あるし上がってかない?」秀を部屋へ誘う。 一緒に過ごした一日で、益々お互いの気持ちが増したと感じていた。家に着くと同時に・・・初めて、秀と結ばれた。
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