学び

9/11
前へ
/22ページ
次へ
すっかりと、夏がはじまっていた。 今まで私は、どちらかと言うと派手めな服装を好んでいた。でも今年の夏からは、大人っぽい秀を意識して、少しシンプルな服装にし、実年齢よりも年上に見られることを目指していた。 いつもの土曜日の外食。 今日は私達にしては珍しく、少しお洒落なイタリアンのお店に来た。 私が職場の人に良い評判を聞いたので、行ってみたいと言ったからだ。 秀が私に打ち開ける。 「ずっと聞きそびれてたんだけど、葵ってさ俺の年齢知ってるよな?」 何を今更言い出すのか。キョトンとする私。 「29歳でしょ?来月いよいよ三十路だね!」不思議そうに話す私。 「あ。やっぱり!」と参った顔をする秀。 「これ、見て。」と財布から免許証を差し出し私に見せる。 「美佳ちゃん何も言ってなかったんだ?」と美佳に濡れ衣を被せるような言い方。美佳は秀と出会うキッカケになった元同僚である。美佳とは、普段そう付き合いもなかったりする。本当にたまたま借りていたPCソフトを返すついでに、食事をしたのだった。 「美佳ちゃんとは、あれ以来だし」と言いながら差し出された免許証を見る私。見た瞬間、大爆笑をはじめる私。生年月日が29歳ではなかった。 「よく今まで黙ってたね~5つもサバ読んでいたの!図々しいにも程があるわ~!」笑ってる私を見て秀の表情が和らぐ。 「普通笑う?」と秀も笑う。 「あの時はまさか、彼女になるとは思っていなかったから、面白半分でサバよんでみたんだけど。言い出すタイミングもなく来てしまって。ごめんな。」 と事情?を語る秀。 「普通さ怒るよ?覚悟して言ったのに。さすがだわ!」とその後、私は秀に怒らずに笑ったことを、やたらと褒められた。秀の中では怒るに値することだったらしい。 たまには私も秀に影響を与えていることがあるんだとその時感じた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加