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土曜日のデ-トのときに私はお昼間のスク-ルで新しく習ったことの話や制作したものを秀に見せる。
嬉しそうに話す私の話を秀は一通り聞いてくれる。そして必要以上のリアクションをしてくれる。技としているリアクションだということは知っていた。秀は人と話すときにリアクションを大袈裟にすることがよくある。でもそれは、秀の思いやりだと私は解釈していたので、そのリアクションを聞くことも嬉しかった。一通りのリアクションを終えて初めて秀は自分の意見を述べる。時には凄く辛口でもある。
「そんな企画じゃぁ喜ばれないな。見ためだけで使いずらい」とか、時にはその企画を制作した場合どのような場所で需要があるか、だとか真剣に入り込んで意見をくれる。
そうして私は秀から向上心を貰っていた。
「そうだ。名刺がもうすぐ無くなるから葵ちゃん作ってみてよ?」秀が私に名刺を依頼する。
「一緒に作ろうっか。その方が円滑でしょ?」秀が私の家に来たときに、一緒に秀の名刺を作ることになった。
水曜日になり、秀が来る。食事を終え二人でpcへ向かう。小さなサイズの枠の中に文字が配置されていく。
最近の私は、習ったことを生かすことを意識しすぎていて、全体的にガチガチ固くまとめすぎてしまっている。秀の意見や感性がそんな私を緩めてくれる。
以前から秀は会社のロゴマ-クを考えてみて欲しいと私に言ってくれていた。
でも、私はしなかった。
既に秀はロゴマ-クを持っていたからだ。私がしなかった理由は、そのロゴマ-クに勝てる自信がまだないからだ。
秀が自分で考えたそのマ-クは、会社名の頭文字と事業内容を兼ね備えたものを意味している。一般的に見て決してズバ抜けてカッコイイという訳ではないのかもしれないが、私には凄く素敵なマ-クに見えた。
秀がこれまでの戦いや思いを込めて考えたマ-ク。私にとってはロゴマ-クというより、宝物だった。
勿論、ビジネスの為のものではあるので、変更することは良いことでもあるのだろうが、私には出来ないこと。
だから、この名刺にも既にあるロゴマークを入れる。既にある印刷物からロゴマークをスキャンし、丁寧にトレースをしていく。これを考えた秀の顔を思い浮かべながら。
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