ハジマリ

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出会った日に、約束を交わしたこと。時間を作れたのはゴールデンウィーク最終日。 「何処にいこうか?」そんな会話が何日も前から、繰り広げられる。私は休日デートといえば、大阪や神戸でショッピングが王道かという発想であった。秀はというと、街は嫌だといった。秀の出した提案は、”陶芸”をしに行こう!”陶芸”は初めてであったが映画”ゴースト”を思い出し、凄く乗り気になった。 「葵は電動の回すやつだと思っているんだろ?違うよ。粘土タイプじゃないと面白くないからな」 え??クルクル回せないの?回してみたかったのになー。なんて、思いながらも秀と過ごせるなら、本当は何処でも良かった。陶芸といえば、信楽焼きらしい。塗料の色が信楽焼きが一番好きだと秀は言っていた。滋賀までの道のりも、楽しい。車の中は、他に意識を向けるものもなく、思うままに会話が出来る。秀はずっと私の手を離さない。 「どんな物を作るのぉ?何かびっくりするくらいオーソドックスなもの作ってみてよ!」物造りで生計を立てている秀の作品に、期待を含ませながら、興奮気味に話しかける。 「オーソドックスで、どうするんだよ!俺のは、凄いよ!」さらに負けずに言い返してくる秀。 「だからぁ、凄くオーソドックスにワイルドに決めてね!」更に押してみる。 「え?オーソドックスって意味解かって使っている?」私の顔を覗き込む秀。 「解かってるよ。ワイルドとか、並以上みたいな意味でしょ。」何の気なしに、”オーソドックス”を説明する私。 秀は、爆笑しはじめる。 「ちがうし!定番とか普通にっていうニュアンスだよ!」と否定する秀。そんなはずは、ない。今までオーソドックスをこの意味で使ってきて、話が噛みあわなかったことが一度もないのに。 「違うよ!雑誌とかでも、オーソドックスな○○なんてよく書いてるじゃない!」と思い浮かばせてみる。 「だから、それは定番な服とかって意味じゃん」秀の言葉もまた、納得してしまうが、お互い一歩も譲らないまま滋賀へ到着する。
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