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その頃、大志はお風呂から上がり、ご飯にありついていた。
だけど、食欲が湧(ワ)かない・・・。
そんな大志を見て郁美が声をかけた。
郁美:『何かあったの?』
その一言に大志は箸を置き今日あった事を正直に話した。
大志:『実はさ今日、直樹に怒られたよ。』
郁美:『直樹さんに?』
大志:『うん。
三谷がさ毎日俺の所に来て、携帯電話とメールアドレスを教えてくれってしつこいんだ。』
郁美:『うん。』
大志:『俺は俺なりにきちんと断ってるつもりなんだけど、
直樹から見たらまだ甘いんだって。
今のやり方じゃ、気を持たせるって。
気をつけろって言われたよ。』
郁美:『そうだったの。
でも大志さんはそれ以上の態度は無理なんじゃない?』
大志:『何で?』
郁美:『それが大志さんだからよ。
直樹さんと大志さんは違う性格。
価値観も受け取り方も違う。
直樹さんは物事をハッキリ言う人だけど、それは時に傷付ける。
大志さんは相手の気持ちを先に考えてしまうから、なかなかキッパリ言えない。
だけどそれは時に傷付けるんだよ?
傷付けると言う所では同じでも、そこに至(イタ)るまでの肯定(コウテイ)が違うの。
確かに直樹さんの言う事も解る。
だけど、大志さんがどう対処するかだよ?
受け流すのか、ちゃんと向き合って解ってもらおうとするのか。』
郁美はそれ以上は何も言わなかった。
大志も黙ったまま、
ビールとタバコを持ち、ベランダへ出た。
そんな後ろ姿を郁美はただ ただ、黙って見つめている。
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