鉛色の空

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「いらっしゃいませ 今日はどうなさいますか?」 「あ、か…カットで」 「かしこまりました」 あまり美容院に縁のない詩乃は若干緊張しているのか少しばかり固かったが、 順番を待っている間、雑誌を見て嬉しそうにもしていた 「矢嶋様」 「…あ、はい」 美容師に呼ばれ、鏡の前に座る 「今日はどのようにしますか?」 詩乃の髪を触りながら、美容師は笑顔で尋ねる 「ショートにしたいんですけど」 「えっ! こんなに手入れされてるのに」 「や、いいんです」 もったないないなあ~ 美容師はそう言いながらも手際よく、カットに取り掛かった シャッ シャッ リズミカルかつ、スピーディーにハサミが滑る 背中まであった詩乃の髪はパラパラと舞うように床へ落ちる 「どうでしょうか」 「あ……はい」 「今、カットとカラーリングされると安くなってお得なんですが、どうします?」 カラーリングかあ 「……。 じゃあ、お願いします」 「ありがとうございます」 「色は、どうなさいますか?」 「え…っと、 じゃあ、この色で」 美容師は笑顔を見せると染め粉を取り出し、カラーリングに取り掛かった あ~なんだか眠くなってきた 詩乃は飽きてきたのかカクン、カクンと首が傾き始め、いつの間にか眠っていた 「矢嶋様。 終わりましたよ」 「……あっ 寝ちゃってた…」 「色、どうですか?」 「……わ。」                  
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