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｢理乃……｣
その振り返った女は
去年死んだ理乃に酷く似ていた
いや、理乃そのものだった
白い肌も
華奢な体も
背中まで伸びた栗色の髪も
大きな目も
小さな鼻も
いつも俺の名前を呼んでいたその唇も
自分は幻覚でも見ているんじゃないかと思った。
｢…………あんた、｣
俺は話しかけようとするがその前に彼女は走ってどこかに行ってしまった
｢…あ。生徒手帳…｣
彼女が去った跡には彼女のものと思われる生徒手帳が落ちていた。
｢矢嶋詩乃…。
……はっ
俺、阿呆かよ…。｣
理乃がいるわけないのに
理乃に会えるわけないのに
――でも
あの女が振り返った時
確かに泣いていた
別人とはいってもやっぱり気になる
｢矢嶋詩乃…か｡
……ん？｣
生徒手帳の中からヒラリと一枚の写真が落ちた
半分で切った跡のある写真
｢…っこれは………！｣
少年は目を見開き、
ただ、ただ茫然と雨に打たれた
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