鉛色の空

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「どこで落としたんだろう…」 心当たりのある場所を探してみるが姿を覗かせる事はなかった 「どうしよう、あの中には私の大事な写真が入ってるのに……」 最初で最後になってしまったお母さんとの写真…… あまり覚えてないけど、あの頃は幸せなんだったと思える 「……諦めるしかないのかな」 ため息をついた少女――詩乃は鞄から鍵を取り出し、自宅へと入って行った 「………。」 普通の家庭の様に"ただいま"と言うことはない 言ったところで誰が返事をするだろうか 母親は酷く自分を嫌っていて、目も合わせようとしない それはきっと、私が似ているからだろう 私と母親を捨ててどこかへ行ってしまった父親に。 「…嫌われて、邪魔がられて当然なんだよね。」      
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