始まりの語り

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学生生活は常にミステリーだ、とは僕の友人の言葉である。 大半の人の人生の半分はリーマン生活だが、よく《おもしろいこと》が起こるのは、学生という肩書きのあるときだと言うのだ。 本当かどうかわからないけれど、とにかく彼は、断定的なまでにそういった。 彼――不知火賢一はクラス一の秀才だ。 賢いだけじゃない。 どうでもいいことを含めて物知りでもある。 だから僕は、自分の浅学菲才さを嘆き、たまに彼を《うんちくん》と皮肉ったりする。 この上なく下品な別称だが、うんちくを垂れるやつにはピッタリだ。 しかしそれにしても、不知火ではないが、確かに学生というのは変わった生き物が多いような気もする。 この場合、変体とか、奇人とか、非常識とか、異端とかそういう類の、変わった生き物ではないが。 もっと適切な表現をするなら個性豊か、といえる。 四字熟語を用いるなら、十人十色だ。 ――たとえば、物知りな秀才、文武両道な彼。 ――たとえば、校舎の一室を陣取った彼女。 ――たとえば、優秀な結果を《たまたまだよ》と片付ける彼女。
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