通せんぼう《さっちゃん》 Ⅰ

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四月は桜の季節だ。 また出会いの季節でもある。 人々は期待と不安で胸がいっぱいの季節なのだ。 だがこの高校は、そんなものを見事に裏切っている。 青海高等二年に無事進級したクラスの面子は、おおよそ一年次と変わらない。 それには理由がある。 この高等学校は、一学年に六クラスあるのだが、その序列があまりにも酷く、醜態を晒すような形になっている。 つまり成績の良い順で、六組から一組に向かって席が置かれる。 六組は成績の良い連中が、 一組は成績の悪い連中の吹き溜まりとなってしまうわけだ。 窓際から三列目。 前から三番目が僕の席。 その後ろが不知火だ。 これも一年次と変わらない。 僕の苗字が「白石」だから、クラスが同じになってしまったら、ほとんど高確率で僕は不知火の前の席になってしまう。 始業式が終わって二日しか経っていないというのに、新鮮味など何一つない。 いや、始業式からそんなもの微塵もなかったか。 担任すら変わっていないのだから。 「まあまあまあ、そんな白けた顔してんなよ、コウちゃん。折角二年も同じクラスになったんだし、仲良くやっていこうぜ、相方よ」 にやにやして不知火は言う。 えーっと、どういう話からこういう流れになったんだっけな? 数秒ほど考えて思い出す。 アレだ。 転校生がやってくるぞ云々で、お前とも腐れ縁だなという話をしていたんだ。
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