通せんぼう《さっちゃん》 Ⅰ

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「それと趣味は焼物ですね。愛知の瀬戸焼が特に好きです」 高校生女子にしては、一等変わった趣味の持ち主だった。 それにしても焼物とはまた、ずいぶん渋いものだ。 「席は白石の隣が空いているから、とりあえずそこに座ってくれ」 「最後の席も空いてますよ」 後ろから声がした。 不知火ではない。 「あそこは和頼の席だ。今日は欠席している」 千坊は僕の隣に座ると、よろしくと言って、八重歯を覗かせて笑った。 「よろしく、さっちゃん」 「さっちゃん?」 と千坊は首を傾ける。 「紗智だからさっちゃん」 「ずいぶん馴れ馴れしいですね、あなた。一応初対面だというのに。早速ニックネームを付けますか」 「おや、いきなり口説きですかい、相方」 後ろから不知火が割り込んできた。 「ちげぇよ、バカ。いやあ、僕ってさ人の名前覚えるのが苦手だから、ニックネームで呼んでんだよな。ニックネームで呼んで、で次第に本名を脳みそに焼き付けていくって感じなんだよ」 そうとも、何を隠そうとも、デーブの愛称を提供したのもこの僕だ。 そのせいで、昨年はデーブに目くじらを立てられ、数学の難問を答えられないとわかっているのに、よく僕を指名し恥をかかされたものだ。 「失礼ですよ、それ。どうして人の名前が覚えられないんですか」 「人の名前というのは、そもそも人が付けたものだ。だからその上から、新たな名前、つまり愛称を上乗せしてやっても構わないだろ? 名前なんて、人を呼ぶための道具に過ぎないんだし」
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