83人が本棚に入れています
本棚に追加
「それと趣味は焼物ですね。愛知の瀬戸焼が特に好きです」
高校生女子にしては、一等変わった趣味の持ち主だった。
それにしても焼物とはまた、ずいぶん渋いものだ。
「席は白石の隣が空いているから、とりあえずそこに座ってくれ」
「最後の席も空いてますよ」
後ろから声がした。
不知火ではない。
「あそこは和頼の席だ。今日は欠席している」
千坊は僕の隣に座ると、よろしくと言って、八重歯を覗かせて笑った。
「よろしく、さっちゃん」
「さっちゃん?」
と千坊は首を傾ける。
「紗智だからさっちゃん」
「ずいぶん馴れ馴れしいですね、あなた。一応初対面だというのに。早速ニックネームを付けますか」
「おや、いきなり口説きですかい、相方」
後ろから不知火が割り込んできた。
「ちげぇよ、バカ。いやあ、僕ってさ人の名前覚えるのが苦手だから、ニックネームで呼んでんだよな。ニックネームで呼んで、で次第に本名を脳みそに焼き付けていくって感じなんだよ」
そうとも、何を隠そうとも、デーブの愛称を提供したのもこの僕だ。
そのせいで、昨年はデーブに目くじらを立てられ、数学の難問を答えられないとわかっているのに、よく僕を指名し恥をかかされたものだ。
「失礼ですよ、それ。どうして人の名前が覚えられないんですか」
「人の名前というのは、そもそも人が付けたものだ。だからその上から、新たな名前、つまり愛称を上乗せしてやっても構わないだろ? 名前なんて、人を呼ぶための道具に過ぎないんだし」
最初のコメントを投稿しよう!