二番目の男

10/13
前へ
/271ページ
次へ
「あぁクソッ!岡本のヤツ、マジでウザくね?ナオヤ!」 「…………」 学校からの帰り道。 先ほどから、岡本潤平の悪口ばかり言っている源二郎。 一方、直哉は、ずっと黙ったままである。 それを不思議に感じながらも、源二郎は怒りに任せてわめき続けていた。 そして、二人は、二人が別れる道となるT字路へ差しかかった。 源二郎が言う。 「じゃーな。あんま気にすんなよ、岡本が言ったことなんて!」 すると源二郎は、直哉の口から、予想だにしていなかった言葉を聞くことになる。 「僕、気にしてないよ」 「えっ?」 目を丸くする源二郎。 直哉が嘘を言っているようには見えなかった。 直哉は言う。 「岡本くん、なんだか様子がおかしかったから」 「はぁ!?」 思わず、源二郎は、肩に担いだバッグを落としそうになった。 「あのなぁナオヤ!どう斜めに見たって、岡本はガチでヤなヤツだろ!?」 「う、ん……そうかなぁ」 「ったりめーだ!賭けてもいいくらいだっつーの!」 「…………」 また、翌日。 源二郎は、いつもより早く登校した。直哉のことが気になっていたからである。 しかし、どうにも早すぎたのか、まだ彼の姿はなかった。 走って暑くなったので、紺色のブレザーを脱ぎつつ、辺りを見回す源二郎。 すると、ある男が目に入る。 「相川」 野球部に仮入部していた、相川であった。 なにやら机に座って読書をしているようだが、源二郎は、構わず話しかける。 「よー相川!なんの本読んでんだ?」 「…………」 「なあ、聞いてんのか?」 「…………」 相川は、まるで源二郎を空気と認識しているかのように、意に介さない。 また、その表情からは、なにを考えているのか全く読み取れなかった。 うろたえる源二郎。 「ちぇっ、変なヤツ」 とだけ吐き捨て、源二郎は、風を受けて涼もうと窓際へ行く。 そのうちに、教室のドアの開く音がした。 直哉か?と思い、源二郎は、振り返って目を向ける。 直哉ではなかった。背が低く、体も細めの少年である。 「あれ、たしかお前……」 源二郎が言った。 その言葉に敏感に反応し、少年は源二郎へと歩み寄る。 「1組の松田俊行。キミ、青木源二郎くんだよね」 「お、おう」 「ちょっと挨拶に来たんだ。昨日はすぐに帰っちゃってたから」 松田俊行は、岡本や相川と違い、人当たりの良さそうな少年であった。
/271ページ

最初のコメントを投稿しよう!

661人が本棚に入れています
本棚に追加