二番目の男

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「ゲンちゃんっ」 通学路を歩いていた源二郎に、結希が駆け寄る。 「ゲンちゃん、おはよう」 明るい笑顔で挨拶をする彼女に、源二郎は、冷めた気持ちで視線を向けた。 (朝からそのテンションはウゼーんだよ) 相手は幼なじみの女の子なのに、彼女に対して、源二郎はやたらと冷たい。 挨拶も無視した彼であるが、結希は笑顔を崩していなかった。 「ね、ゲンちゃん。昨日、キャッチボールやってたよね?」 「あ?なんで知ってんだよ」 「私、いっつもゲンちゃんのこと見てるもん」 「ストーカーかお前は!気持ちワリぃな!」 「ゲンちゃん、酒井くんに教えてあげてたんでしょ?」 「ゲンちゃん言うな。次言ったら殴る」 「ゲンちゃん、ひどい……」 その瞬間、源二郎の『こめかみグリグリ攻撃』が炸裂した。 結希は、その痛みに表情を歪める。 「い、い、痛いよ~!」 「るせー!殴られないだけありがたいと思え!」 『男女平等』を唱える青木源二郎、相手が女だろうと容赦しなかった。 教室に着くと、源二郎は真っ先に、酒井直哉のもとへ向かう。 「ようナオヤ!おはよー!」 「おはよう、青木くん」 優しげな表情で返す直哉。 源二郎が言う。 「呼び捨てでいいって!」 困る直哉。 「いや……あの、僕、そういうの苦手だから」 「だったら、下の名前で呼んでくれよ。友達だろ?」 すると、直哉は微笑んだ。 「じゃあ、源二郎くんで」 「おう!長くてゴメンな!」 二人は、キャッチボールを通じて仲良くなったのである。スポーツにはそのような魅力もあるのだ。 源二郎と直哉は、それからも毎日、昼休みと放課後にキャッチボールをしていた。
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