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剣は自分が止める事なく、間に入ってきた人間の力で押し退けられた。
ふわり、とガイの前に甘い香水の香りが舞うと同時に紅い髪が舞った。
「ちょっとちょっとー、俺さまが助けてあげたのに、ガイ君ったら無反応?俺さま悲しいんだけどー?」
それは、世界樹の神子ゼロスであった。
剣を横に力を削ぐようにずらすと『負』の自分を遠退けるように剣を押した。
と、同時に相手の上が暗くなりスパーダが上から剣を振り落とした。
「うおりゃぁぁ!!」
「くっ……!」
スパーダはニ刀流の使い手で、ガイも素早さには自身があるが二本の剣を一気に相手にすると分が悪い。
それは分身である相手も同じなのか身体を離した。
「……有難うな、皆」
絶対に、今の自分には助けてくれるお人好しがいるから。
そう、だからこそガイは剣を抜かなかったのだ。
「あぁん?礼なんかいらねーよ。それより、お前んとこの紅い髪の坊っちゃん。今にも倒れそうな真っ青な顔して俺らにガイを探してくれって頼んでたんだぜ?」
ガイが礼を言えば、スパーダが興味無さげに答えた。
ルークが。
きっとルーク自体はこの前に一人で勝手をしたから船から出して貰えなかったんだろう。
でも、俺が心配で皆に声を掛けて……
「……何が可笑しいのよ?」
クスクスと笑いを溢せば、あまり傷も無いのにゼロスがファーストエイドを唱えながら問いかけてきた。
「……やっぱり、悲しむ人間は違うと思ってな」
そうだ。
悲しむのは、姉上じゃない。母上でも父上でも。
確かにそれもあるけれど。
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