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奥に着いたルークは、その瞬間に己の中から何かが抜け落ちる感覚を受けた。
目の前が、フワリと黒くなる。
そして、気が付けば過去の自分。
髪の長く、そして全てを拒絶し全てに拒絶された自分自身が立っていた。
「よぉ……いい子ちゃんぶって、楽しいか?」
そいつは、いかにもだるそうにルークに声を掛けた。
彼は、自分。
ルークの持つ『負』そのもの。
だからルークが一番心に傷を持つ所を遠慮無く抉り広げようとする。
それゆえに、相手である過去の自分が言った言葉にルークは軽く拳を握った。
「………楽しい、なんて思えてない事なんてお前が一番知ってるだろ?」
だからこそ、隠す事なく言えば、相手は楽しそうに口元を引き上げた。
「そりゃ、そうだよなぁ。過去の自分は、自分じゃない。今の自分だけを見てくれ、なんて過去の自分全部否定しなきゃいけないし、今のお前だって、またいつ皆に捨てられるか分かったもんじゃないもんなぁ?」
「………っ!」
過去の、自分を全て捨てる。
そう言った時に仲間は頑張れ、と言った。
誰も、過去の自分はいらないと、言うことだとルークは理解した。
つまり、また馬鹿な事をすれば、今の自分も捨てられるかも知れない。
皆に冷たい視線、飽きられた視線、うんざりとした視線を向けられた時は、本当に、本当に、怖かった。……初めて、人との繋がりが無いことに恐怖を覚えた。
……だから。
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