桜舞散る季節~序章~

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――桜舞い散る出会いの春。  明治から続く歴史深き白華女学院の校門は、初々しい新入生の少し気後れした姿が良く見受けられる。  昔は、良妻賢母となるようにとの方針で建設されたこの学院も、今では都内女子高の中では右に出る物が無い程の進学校となっている。  乱れた生活になる事を心配する田舎の両親もこの学院なら、寄宿舎もあり、学歴にも花が付くからと、上京を許してもらったという、東京慣れしていない生徒達も珍しく無いものだから、余計におどおどして見えるのかもしれない。  生徒会のメンバー自らが、その1人1人の胸元に新入生の花飾りを着けて行く。  そんな物慣れない新入生の中で、1人の少女の堂々とした佇まいは目を引く物が有った。  その生徒の名前を、瀬川叶輝と云う。  出来るだけ、身近の生徒と会話をして、緊張を紛らわそうとする新入生達とは違い、彼女は校門に立つ歴史ある桜の樹に保たれて、読書に耽っていた。  胸元にある花飾りは、確かに彼女が新入生である事を示している。  色素の薄い亜麻色の髪の毛は綺麗に腰まで手入れがされているのか、傷んでいる様子無く、和かな風になびくままに更々と波打つ。
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