桜舞散る季節~序章~

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生まれながらなのか、人工的なものか判別の付かない、緩やかな癖毛を、少し鬱陶しそうに掻き上げて、叶輝は小さな溜息を吐いた。 (こんな騒がしい中で読書なんて出来るかっつーの…)  自分のクラスも確認済みで、後は入学式の時間迄は自由行動出来る筈だから、もっと生徒の少ない場所を探せば、ゆっくりと読書をする事も可能だったが、クラス担任の号令と共に並ばなければ、式場までたどり着く事も出来ない。  叶輝の性格上、その億劫な新入生入学式とやらも、エスケープしてしまいたいのだが、何の因果か、新入生代表に選ばれているのだから、エスケープする事も出来ない。 (大体、入学試験で古文と漢文捨てたのに何で私が新入生代表なんだよ…) 叶輝は小さく舌打ちをして、開いていた本をパタンと閉じた。  由緒正しき進学校、白華女学院の今年のトップは、古文と漢文を捨てた瀬川叶輝なのだ。 (プライド高くても、所詮そのレベルか……)  「瀬川さん、こんな所に居たの?」  新入生の団子を押し分けてたどり着いた、少女が少し息を弾ませながら呼び掛けて来る。
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