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講堂の中は、ザワザワとした喧騒と甘いバニラの薫りと珈琲の薫りが満ちていた。
先日行われた入学式で使ったこの広い室内は、本日新入生歓迎会を開く為に、シルクのテーブルクロスをかけたテーブルが幾つも並んでいた。
毎年行われるこの催しも、その時の生徒会のメンバーによって、野点を行う事もあるのだが、今年の生徒会は、ティーパーティーを企画していたのだ。
全面的に料理研究部による協力に頼り、部員はこの日の為に、スコーンやクッキー、マドレーヌ等を用意する為に、前日の授業を全て免除されたと噂されているが、真実の程は定かではない。
舞台に一番近い、シルクのテーブル席に座っている、生徒会長は遥か遠くへ視線を向けて、小さく問いかけた。
「ねぇ、瑞恵?彼女をどう思う?」
その、遠くを指差した先には、クラスメイトと談話している叶輝の姿があった。
「うん…そうね、代表で挨拶をしていた彼女ね?とても華があると思うわ。もう周りが放って置かないのね、何時でも誰かが傍に居たがるんだわ」
瑞恵、と呼ばれた眼鏡の生徒は、とてもおっとりと、言葉を選びながら唇に指を当てて答えた。
「よく見かけるの?」
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