桃尻夏子の場合

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 そんな退屈だが、安らぎもない3日を過ごしていると、来客者を知らせるチャイムが鳴った。 「宅配です」 私は退屈しのぎにネットオークションで落札したゲームソフトが来たと思った。 ゲームはあまりしないし、飽きたら全てネットオークションで1円でスタートさせる。相場が5600円でも知った事ではなかった。   そして、私が出展したソフトを巡り、人々が競り合う姿を見ていると楽しかった。   結局、4800円に送料。支払い手数料を含めると向こうは店で買うのと大差がない。 私は、落札した相手を笑いながら4800円と送料を受け取り、ネット銀行に貯金していた。 そのさして関心がないゲームだったが、 コミュニティサイトで仲良しの人が勧めるので嫌々ながら買ってみたのだ。 「はーい」 私はドアを開けようしたが、異臭がしたので止めた。 玄関は芳香剤の香りでいっぱいだ。 アパートは狭く芳香剤の香りも強烈。 だからこそ、悪臭はより匂う。 私は、ドアを勢いよく閉めて再び鍵を閉めた。 「桃尻さん開けて下さいよ。お届け物ですよ」 とドアをノックしながら高くも低くもない中途半端な声の男が言う。 私は開けない。私は沢尻。 桃尻はサイトの名前だ。 それを知るのは、サイトの関係者か、その情報を提供された者だ。
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