桃尻夏子の場合

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 私は彼氏に連絡しようとした。 が、なり止まないノックの音は私に恐怖感を与えるのか、指が震えて上手く携帯を扱えない。使いなれた携帯をだ。 「宅配便でーす。開けて下さいよ」 と繰り返す男。私は彼氏の携帯にメッセージを残して、玄関の男に質問を試みる事にした。 「荷物はどこからですか? 私は注文した覚えはないです」 「アリソンさんからですよ」 私は、通販専門の店舗を持たない倉庫で商品を監理し、その倉庫の面積は東京ドーム6個分の世界最大規模の激安通販サイトには注文していない。 「なら、違います。私は注文してません。クーリングオフを使います」 私はシロネコメール便で注文したのだ。 「クーリングオフは私の宅配店では使えないんですよ。キャンセル料を下さい。1万円になります」 そんな事は聞いたこともないし、アリソンはキャンセルしても料金は請求されない。 SNSで知り合った人が、ホワイトボックスのハードディスクを誤って5個注文した時もキャンセル料は取られなかったというし。 「そんな業者があるか。しかもアンタは私服だし。アンタは何者だ? 警察を呼ぶぞ」 何か、違う声が聞こえた。普通の声だった。 私はドアを開けてみた。一人ではない今がチャンスだから。
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