序章

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『ちっちゃなころからワルガキで~』って歌があるだろ? ま、聞いといてなんだけど、俺もよく知ってる訳じゃない。 大分昔に流行った歌だし、そもそも俺はあんまり音楽なんて聞かないたちだ。CDの一枚も持ってやしないし、iPodなんてましてや、だ。 ただ、なんかの折に流れてたその曲を聞いて、ふと思った。 ああ、まさしく俺だ、と。 俺は、桜坂洋一。 歌に出てくるようなワルガキで、まさに箸にも棒にもかからないってやつだった思春期のころを経て、どうにかこうにか社会を担う大人の一人として、仕事に励んでる今日この頃だ。 ちなみに俺の思う『大人の条件』てのは、 1,定職がある 2,経済的、精神的に、自立している っていう、二つの点だ。 分別があるとか、常識的だとか、空気を読めるとか、そういうことはいれない。 ま、そんな項目を大人としての必須要項にいれちまったら、俺をはじめとした大勢が、一生大人になんてなれないだろうからな。 でも、まあ俺の条件からすれば、俺は、至極まっとうな大人をやらせてもらってる。 高校時代を知るやつらは、それすら奇跡だというだろうけど…… あぁ、いや。 奴等は、詐欺だっていうかもな。 まあ、四大出のやつらでさえ、仕事がない不景気な今日この頃、俺みたいな高卒の奴が就職しちまったんだ。 詐欺じゃなくったって、因果な話だ。 まったく、神様っていうやつはいったい何を考えているんだかと、夕日がきれいでちょっとセンチな気分になってるときには、考えてしまうこともある。
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