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いきなりパチンと瑛一が指を鳴らして唯はなにを、と思ったがすぐに気付いた。
自分の背後に人が立っていることを。
唯は相手を見ることなく微笑んだ。
「どうしたんだ、麗(うらら)」
麗と呼ばれた少年はひょいとソファーに飛び乗り、腰を下ろした。
さらさらした金髪に華奢な麗は異国の少女のようだ。全体的に黒い服装だが、太ももで止まったズボンの丈は麗の長く白い足を露出させていた。
「久しぶりだね、我らが主様」
主様と呼ばれた唯は満更でもなさそうに、また角砂糖を口に入れた。
麗は火月の護忍衆の1人で情報集めが上手い忍者だ。
最強(凶)な唯には護忍は必要ないが家の決まりで付けているだけだったりする。
「瑛一さん、なんで麗がいるんですかね」
「櫻木麗一(さくらぎれいいち)はここの生徒で俺の甥だ」
(ここの生徒?甥?)
唯は角砂糖を詰まらせて咳込んだが、麗は大丈夫ー?と唯の背を擦るだけだった。
「僕の本名は櫻木麗一だよ、深野唯様」
基本的に無関心な唯は護忍衆の本名や素性なんて知らない。
護忍衆は主を把握している(唯に陶酔しきっている者もいる)のに、全くな主である。
「今は天上唯様だよね?よろしくね」
「あー、様付けとか学校でしなくていいからな麗」
麗は頬を膨らませて唯の額をつついた。
「麗なんてやめてよ、唯」
「分かったよ麗一」
ふふと笑みを浮かべ麗改め麗一は唯に抱きついた。
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