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  「えーっと、お前の席は窓際の後ろな」 窓際の後ろ、なんともいい席である。 いじめるなと桂哉が言ったにも関わらず、歩こうとする唯には一斉に足が出された。 唯が避けて歩こうとしていたのにまた天井からなにかが落ちてきた。出された1人の足の上には蠍が乗っていた。 「うわぁああ!」 「なんで蠍が!」 麗一の仕業だ。 桂哉は天井を見ながら溜め息をついていた。 「蠍はどうすりゃいいんだよ…」 「あ、僕がもらっておきます」 唯はニコリと笑い、蠍を取り上げて肩に乗せると席へと歩いていった。 「あの、天上君…」 遠慮がちに話掛けてきたのは隣の席の美少年だった。濡れたような黒髪に潤んだ色素の薄い瞳をしている。 「ぼ、僕は野々山語(ののやまかたり)だよ。よろしくね」 変わった名前だななんて思いながら、唯にはよろしくする気がなかった。 が、役者な唯は気持ちを微塵も出さずに笑った。 「よろしくお願いしますね、野々山君」 「あ、語って呼んでほしいな」 「分かりました。じゃあ唯と呼んでください」 「うん!ありがとう!」 心からの笑顔を見せた語に唯は後ろめたくなりながらも表情を作った。 語は人気があるのか、唯には嫉妬の視線が送られ針のむしろだ。 「ごめんね、僕…」 「ああ、語が気にするようなことではないですよ」 面倒くさいなと肩の蠍を撫でた。  
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