642人が本棚に入れています
本棚に追加
唯が口笛を吹くと、羽を広げ紙を持った鷲が現れた。
「生徒名簿だ。なんか怪しい奴いたら…あ、るんきょんありがとな」
唯はオニギリを半分、るんきょんにほらと与えた。
ネーミングセンスは皆無である。
「るんきょんって…」
麗一は名簿をめくり、胸ポケットからペンを取り出した。
「今さっき言った2人も関わらない方がいいけど、一番関わったらダメなのは生徒会だよ」
「ん?隼も生徒会書記だろ?」
そうなんだよね、と麗一は器用にペンを回しはじめて空を仰いだ。
「まぁ、容姿と家柄重視の…要するに人気者の集まりなんだよ。貝原は茶道の家元の息子だし、隼人もああ見えて家は華道の家元だからね」
唯が隼人の家柄に少し驚いているようで麗一は思った。無関心すぎるだろ、と。
「容姿端麗で理事長の親戚なら…ああ、お前も生徒会?」
麗一は不本意そうに頷いた。そんな麗一を見て唯はフーンと面白そうに口角を上げた。
「…じゃあお前とも関わったら駄目だよなぁ?」
「え?やめてよ主!」
麗一は唯の肩を揺さぶった。揺さぶられながら唯は麗一の手に自分の手を重ねた。
「冗談だよ、馬鹿」
「ホント?!」
麗一は笑顔を浮かべて唯に抱きついた。
唯はというと春の陽が暖かくてうとうとして、ついに麗一に抱きつかれながら寝てしまった。
唯は午後の授業は出れないだろうな、なんて麗一は考えていた。
「好きだよ」
唯の寝顔を眺めていた麗一の呟きは唯に聞こえることもなく、風に消えた。
最初のコメントを投稿しよう!