0::Prologue

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  「火月(かげつ)」 そう言われた少年は赤い血のような目を閉じて唇を尖らせた。 普通の顔立ち―いわゆる平々凡々だが、目は吸い込まれてしまいそうな赤。 「俺はその名前が大嫌いなんだよ…知ってて言ってるだろ、クソジジイ」 クソジジイと言われたにも関わらず、立派な髭を蓄えた老人は笑みを浮かべた。 「そうじゃったの~、か・げ・つ」 シュッと風を切り、パシッと老人はそれを掴んだ。 「忍者はクナイに決まってるわい、サバイバルナイフなんて邪道」 火月―深野唯(ふかのゆい)は舌打ちをすると、クナイを持ち直した。 が、老人―深野宜蔵(ふかのよしくら)は咳払いをした。 「なんだジジイ、話って」 「…高校に行く気はないか?」 唯はそれを聞いて顔をしかめた。 一昨日、唯は中学校を卒業したが、高校に行く気が全くないので受験をしなかった。 「高校なんぞ行ってどうする?それに学歴なくても稼ぎはガッポリなんだぜ」 唯は手を振ると100万円の札束が現れ、ほらなとそれで扇ぎ始めた。 「ま、火月の名は気に入らないけどな」 火月とは深我忍者の若頭に代々受け継がれる名前のようなもので、44代目の唯に受け継がれているが、なんとも縁起のよくない数字である。  
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