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「…多岐(たき)だ」
「まぁた、あいつらかよ」
本格的な忍術を使えるのは本家の深野のみで、分家は忍術もどきしか使えない。
多岐は特に深野をよく思っていない。
「気に入らねぇな…。多岐なんか特に亰側に付きそうじゃねぇか。そうなれば、俺が潰すけど」
唯はそれは楽しそうに笑みを浮かべて、クナイを柱に投げた。
宜蔵は溜め息をついた。
天上天下唯我独尊、傍若無人、破天荒。この言葉は唯のためにあるようなものだ。
「だから、高校に行くんじゃ」
「また落ちこぼれないじめられっ子を演じて、暮らすのかよ?ハッ、めんどくせー」
唯は義務教育の9年間、落ちこぼれで地味ないじめられっ子だった。
9年間、そのキャラを貫き通した自分を偉いと自画自賛している唯。
実際は頭も良く、運動神経は人並み外れていいのだが。
唯のキャラが崩壊したとき、明日の朝日は拝めないだろう。
「いや、でも俺の化けの皮が剥がれたときに、いじめてた奴はどんな顔を見せるのか…見てみてぇな」
どうしてこんなに性格が悪くなったのか、孫を見て不安になった宜蔵。
「いいぜ、行ってやるよ高校に。毎月の仕送りは2000万円でいいぜ」
宜蔵はまた溜め息をついて、指をパチンと鳴らした。
「仕送りは2万円でよかろう。どうせ、お前はガッポリみたいだからの」
「ケチ」
そして、どこからか鷹が飛んできた。
この鷹は宜蔵のもので、足には紙とペンを持っている。
「試験は免除してもらった。誓約書にサインしてほしいのぅ」
誓約書とは、高校から出されるもので問題を起こさないことなどが書いてある。
私立櫻李(おうり)学園高校と書いてあったのを見て、唯は首を傾げた。
「櫻李って…全寮制の男子校じゃね?」
「ああ、そうじゃったのー」
「あの金持ち全寮制男子校か。なんかまたいじめられそうだな」
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