642人が本棚に入れています
本棚に追加
「金の無駄遣い…」
金色に光る校門を見て、溜め息を付いた。
そんなことを呟いたのは天上唯(深野唯)。
今の彼は目を隠すためにカラコン、そして中学時代から愛用してきた伊達眼鏡を掛ける地味な少年だ。
「で、どうやって入るんだ?」
この固く閉ざされた門をすり抜けたとしても、防犯ブザーが鳴り響くだろう。
これを潜るのは容易なことだが、誰かに見られる可能性もある。
唯がどうしようかと、困っていると門は重そうな音を立てて開いた。
「ようこそ、私立櫻李学園高校へ。我々は天上唯様を歓迎致します」
頭を深々と下げられ、唯は少し驚いてしまった。
眼鏡を掛けた神経質そうな、執事だったからである。
「案内致します。こちらへどうぞ、天上様」
すると黒塗りの高級車が止まり、彼はドアを開けて乗るように促した。
唯は初めて乗るリムジンにワクワクしながら乗り込んだ。その後に、執事が乗り込んだ。
「ああ、申し遅れました。私は理事長の秘書兼執事、斑鳩誉(いかるがほまれ)です。よろしくお願い致します」
誉はニコリと笑う。
「天上唯です、よろしくお願いします」
唯も誉に合わせてニコリと笑った。
「天上様にはまず理事長に会って頂きます。そして、担任と一緒に教室へ」
「分かりました。あ、ここはどんな学校なんですか?」
唯はこの高校の噂やらは前もって調べているが、関係者から聞いた方がいいと思った。
「ここは環境なども素晴らしい学校です」
どこがだ、と唯は内心毒づいていた。
(プライドが高ぇ金持ちの坊っちゃん共の集まりだろ)
「…ですが、男子校なのでやはり恋愛対象が同性に傾いてしまうようですね」
京臥に慣れてしまったため、あまり驚くことはなかった。
(男子校な時点で薄々見当はつく)
最初のコメントを投稿しよう!