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身構えた唯を老人は楽しそうに笑って見ていた。
唯はクナイでも投げてやろうかと思っていた。
「クナイなんて投げられても私は避けきれないからね。宜蔵と知り合いで君を引き受けたんだよ」
宜蔵と知り合い、唯は納得した。
(ジジイと知り合いなんてこのジイさんも喰えないんだろうよ)
「私は理事長の櫻木順治(さくらぎじゅんじ)。こっちは私の息子、理事長代理の瑛一(えいいち)だ」
瑛一と呼ばれた男は胡散臭げに笑った。
「事情は聞いたが、あまり問題は起こさないでほしいな」
「時と場合によるぜ、瑛一サン。あんたも色々問題起こしてるんだろー?」
眼鏡を外した唯は不敵に微笑んで、瑛一を見た。
瑛一はと言うと、おかしそうに声を出して笑う。
「ははは…、どんな奴かと思ってたら顔はパッとしないくせに肝が据わってんな。最強、火月だし…気に入った、唯」
(気に入られたくねぇー)
唯は内心思っていた。
唯の入学を受け入れた時点でこの理事長達には唯の素性がバレている。
「私は理事長だけど、滅多にここにいないからね。理事長代理の瑛一を頼ってね」
病院に入院している順治は今日のために一時退院をしたらしい。
「紅茶をお持ちしました」
誉は紅茶を持ってきたと同時に眼鏡を掛けた唯。
唯は角砂糖が入ったカップを取り上げ、角砂糖を全部自分の紅茶に入れた。
「おい…、ジャリジャリしてるぞ」
唯がスプーンを混ぜる度にジャリジャリと音がするが、唯は気にすることなく混ぜている。
「紅茶は角砂糖10個、コーヒーは角砂糖15個って僕は決めています」
誉の前でまた猫を被る唯に感心しながらも、その甘い紅茶を飲む唯に呆れていた瑛一だった。
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