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【ルカ 前】
翌日から、少しずつ授業が始まった。
「あ~……なんで講義ばっかなんだよ……。」
机に突っ伏しながら、
ウカ=リクは力なく言った。
それを横目で見ながら
「んなこと言ったって、しかたねーだろ。」
とルキは冷たく言い放った。
実のところ、
ルキ自身、これからの講義ばかりの日々に
気持ちが少し沈んでいた。
自分に鼓舞することも意味して、ルキは
「さっさと、気持ちを切りかえろ。」
と言った。
※ ※ ※
(フフ。
どこで見たことのあるやりとりと少し似ているわね。)
前の方で
男2人がしていたやりとりを
眺めていたユズキは、
微笑みながらそう思っていると
「ユズキ、早いね。」
と後ろから声をかけられた。
ふりむくと、
リリが笑顔で立っていた。
「ええ。おはよう、リリ。」
「おはよう、ユズキ。」
お互いに朝の挨拶を終えると、
リリはユズキの隣に座った。
「けっこう人が多いんだね。」
珍しそうに周囲に目を向けながら、
リリはそう言った。
「そうね。
他のクラスの生徒と一緒ですもの。」
机の上に学習道具を出しながら、
ユズキは答えた。
「今日はここまで。
ここと、ここ、
大事だからよく覚えておけ。
あと、次の授業までに
このことについて、
レポートに10枚書いて
提出しろ。」
黒板を指さしながらそう言った教師は、
チャイムが鳴ると同時に
教室から出て行った。
「おわったぁ……。
さすが、国最高峰……。
授業、はやっ……。」
息をつく暇がない程の
ハイスピード講義を受けたためか、
リリはぐったりとした。
「今日はこれでおしまいね。」
リリとは違い、
至って平静なユズキは
そう言いながら帰る支度をした。
それを見たリリは、
少し悲しそうな顔で
「あれ?
ユズキ、もう帰るの?」
と聞いた。
「ええ。
これから、お父様の会社に行かなければならないの。」
申し訳なさそうに、ユズキは答えた。
「そっか……。」
といかにも残念がるリリの様子に心を痛めたのか、ユズキは
「ごめんね。
明日は一緒に帰りましょ。
美味しいケーキを出すところがあるの。
帰りによっていきましょ。」
と、まるで幼子をなぐさめるかのようにリリに言い、
教室から出て行った。
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